どんな企業も再生の可能性がある、ただ気づかないだけ
再生計画を作るにあたって心がけていることは「どんな企業も再生の可能性はあるが、気付かないだけ」ということである。
特に構造不況産業と言われる繊維や建設などの再生支援を手掛けた経験から、この言葉を大切にしている。また実際に気づく=発見する、ことはしばしばである。
再生計画の策定支援において基本的なこと(何に気付くか)は
窮境原因の特定と再生スキーム(改善の基本方向)作りであり、そのうえで収支計画を作っている。
窮境原因を特定せず、また誤って認識して、根拠のない再生スキームを作ってしまうと、失敗という現実が待ち受けている。
窮境原因を外部環境のせいにすることはしばしば見かけるが、「環境変化がなければ再生しない」ということを述べているにすぎず、とるべきことではない。現に厳しい経営環境の中でも健全な企業は少なくない。
窮境原因と再生スキームの整理に当たっては「ビジネスモデル」を整理する手法を活用している。
ビジネスモデルの整理
「顧客はだれか」、
「どんなニーズにこたえているか(提供商品やサービスの状況)」、
「どのように提供しているか(提供方法)」、を整理することである。
窮境に陥った企業はビジネスモデルのどこかに欠陥があり、再生スキーム(改善の基本方向)はそのビジネスモデルを変える計画のことである。
もちろん、事業を収益の単位に区分(管理会計)して分析することは予め行わなければならない作業である。
たとえば、建設業のケースでは、これまでの顧客(たとえばマンションディベロッパー)の競争による受注を余儀なくされている場合、顧客を変える選択を考えたり、競争回避の戦略を考えたりすることが必要であるが、当然営業戦略や施工方法も見直しを行うこととなる。このようにビジネスモデルを作りかえる支援を実行してきた。
再生スキーム(改善の基本方向)の選択では「商品・市場マトリックス」を活用している。
4つのマトリックス
「現在の市場・顧客に現在のサービス」では市場の競争力を強化することが基本となる。シェアを高める戦略となる。
「現在の市場・顧客に新しい商品・サービス」では、顧客のニーズの掘り起こしを重視している。
「新たな市場・顧客に現在の商品・サービス」ではネット販売などの方法を検討する。
「新たな市場・顧客に新たな商品・サービス」では、リスクは大きいが業種転換が避けられない事業を想定している。たとえば建設業が介護事業や農業に参入するなど。
避けられない事業構造の見直しと意思決定の力
人口の減少や国際競争の激化のもと、現在の事業を続ける場合、事業規模の縮小を余儀なくされる場合が多いが、競合企業の退出による生存者利得も得られる可能性がある。ただし、競争力や体力があればということになるが。
現在の顧客のニーズを掘り起こし、事業を拡大する方法はとりうるよい選択肢と考えるが、営業力を強化すれば、ということになる。
いづれにしても経営戦略の選択という意思決定がキーとなる。経営力の課題である。