金融円滑化法の最終期限を前にして(H25/2)

2013-02-09

 平成21年12月に金融円滑化法が施行された。リーマンショックとリセッションによる厳しい経営環境の下、借り入れ返済の緩和要件が定められ、これまでは経営改善計画が必要であったが、まず、条件緩和を行うことが可能となった。また、金融機関協調による支援も行われるところとなった。
 平成25年3月末に金融円滑化法は期限が到来するが、その後の事業再生支援に及ぼす影響はどうなるか、関心は高まっている。
 
 そこで、この1年(平成24年~)の変化を振り返ってみたい。

 平成24年3月の金融担当大臣談話では、期限到来を控え、「総合的な出口戦略、金融機関のコンサルティング機能の強化と地域密着金融の深化」が強調されたところである。特に総合的な出口戦略ではソフトランディングを目指すとされたところである。
 これを受けて金融機関は平成25年3月に向けて顧客先の選別が始まったといわれている。つまり、支援強化を図る先と、退出を検討する先を区分することであった。

 その後「中小企業等に対する金融円滑化対策の総合的パッケージ」が出された。
 「金融機関に対する出口戦略のヒアリング実施、中小企業再生支援協議会の抜本的機能強化、地域再生ファンドの設立」などがうたわれた。
 特に再生支援協議会の抜本的機能強化では、「平成24年度の計画完了目標を3000件とされ、その標準処理期間を2か月」と定めた。
 これを受けて、再生支援協議会の再生支援マニュアルが改定され、「特にリスケ(返済猶予)による金融支援案件では個別支援チームを必要に応じて」と変更された。金融機関等が行う財務・事業DDを基にして再生計画を策定する方法への変更となった(再生計画を金融機関が持ち込み承認を受ける)。

 ところがその後の出口戦略に大きな変化が生まれた。
 平成24年11月の金融担当大臣談話で「期限到来後の検査・監督の方針について」を発し、「期限到来後も貸し付け条件の変更等や円滑な資金供給に努めるよう促す」と述べられ、返済猶予の申し出に対する取り扱いなどは変わらない方針が示された。金融機関の出口戦略の見直しを迫る内容である。
 
 また、平成24年11月に、中小企業再生支援全国本部のセミナーでは「暫定計画」を行うことができるとされ、「事業の持続可能性を判断する期間を設ける、金融機関が最適ソリューションを提供できる期間を設ける、数値基準達成を原則としない」が、3年程度で事業改善できなければ事業継続が見込まれないと納得できる」とその趣旨が示された。金融機関の貸倒引き当ての猶予期間を設け、その間支援継続を行うことが可能な条件と思われる。もっとも3年以内に改善できなければ退出となることは前提となるが。出口戦略のソフトランディングが一層ソフトになったと思われる。

 しかし、平成24年12月に政権交代が起こった。
 現在、新政権での明確な動きはないが、平成25年2月4日の新聞報道では「条件変更の申し出に柔軟に応じる」ことを金融監督指針に追記すると報道された。
 今、平成24年11月の金融監督指針や中小企業再生支援協議会の取り扱いなどがどうなっていくのか、注目しているところである。
 大きな変更がなければ今後も金融機関主導での再生支援が継続されることになり、事業再生コンサルタントの役割も大きくなると思われる。

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